会津若松を中心とした会津全域の代表的な郷土料理。
 「郷土料理百選」の1つ。
 元々は、武家料理だったものが、広まったもの。
 里イモ、ニンジン、木くらげなどを細かく切って、干し貝柱と干し椎茸でダシをとり、しょう油と塩で味を調えた汁物。
 それに、磐梯竹の子、わらび、キノコなど、季節ものも加わるが、具材の数は、奇数が原則。
 「山の幸」と「海の幸」を、上手にとり合わせた上品な薄味で、透明感のある煮汁である。
 四季を問わず、いろいろな行事、特にハレの席には、必ず出される。
 平たい朱塗りお椀に入れて出され、何杯おかわりしても失礼にならない。
 貝柱と豆麩が入り、塩で味付けを補っているので、しょう油味なのに透明であることが、他の汁物と異なっているところだ。
 令和3年度「伝統の100年フード部門 〜江戸時代から続く郷土の料理〜 (文化省)」に認定。
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こづゆ こづゆは、主に江戸期に北前船がもたらした海産物と会津古来の地場産品の組合せによりできあがった料理です。当時貴重な海産物を保存加工し独自につくりあげた、いわば会津を代表する郷土料理といえるもので、まさに会津の先人が風土に根差した当地固有の料理として創作したものです。その歴史は、江戸後期会津藩八代藩主松平容敬公の参勤交代の折、食べられた『重』という料理がルーツとされます。元々冬期間のお祝い膳に出されていましたが、現在は冠婚葬祭やお正月など特別な日に欠かせないおもてなし料理となっています。伝統工芸会津塗の「大平」という椀に盛られ、「手塩皿」という朱塗りの小皿に分けて食べます。 (文化庁/認定資料より) | 
| 5人前 | 下ごしらえ | 他家の例 (4人前) | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 干し貝柱 (ホタテ) | 8個 | 水に一晩つけて、手でほぐす | 6個 | 4個 | 5個 | |
| 木くらげ | 8枚 | 温水で30分戻し、ゴミや固い部分を除き、細かく切る | 6枚 | 8枚 | 少々 | |
| 里イモ | 8個 | 半月切りし、塩ゆでして、ぬめりを取る | 5個 | 6個 | 5個 | |
| 糸こんにゃく | 1袋 | 3cm幅に切り、湯通し | 1/2袋 | 1袋 | ||
| ゴボウ | 中1本 | イチョウ切りし、薄い酢水につけアクを取り、塩ゆで | 中2本 | 20cm | ||
| ニンジン | 中1本 | イチョウ切りし、下ゆで | 中2本 | 中2本 | 中1/2 | |
| 干し椎茸 | 5枚 | 洗って水で戻し、千切り | 4枚 | 4枚 | ||
| 大根 | 1/4本 | イチョウ切りし、下ゆで | 10cm | |||
| 赤蒲鉾 | 2切 | 細切り | ||||
| 銀杏 | 適量 | 炒って、熱いうちに皮をむく | 適量 | 適量 | ||
| 豆麩 | 多め | 《必須》 水面の大半を埋め尽くすほど | 多め | 適量 | ||
| だし汁 | 3カップ | 3カッフ | 3カップ | 適量 | ||
| 貝戻し汁 | 2カップ | 1カップ | 適量 | 適量 | ||
| 椎茸戻し汁 | 1/2カップ | 少々 | ||||
| 酒 | 1/2カップ | 少々 | 少々 | |||
| 砂糖 | 大1 | 大2 | 適量 | 少々 | ||
| しょう油 | 少な目 | 香りづけが目的で、薄め | 少々 | 適量 | 少々 | |
| 塩 | 適量 | 味を調整する | 少々 | 少々 | ||
| みりん | 適量 | 大1 | ||||
| 卵白 | 適量 | |||||
| 柚子 | 適量 | |||||
【 調 理 】
  (1) だし汁を入れた鍋に、下ごしらえした材料と、戻し汁を入れ煮る。
  (2) ひと煮立てしたら、酒、砂糖、しょう油、塩、みりんで味付けをする。
  (3) ポイントは、しょう油を少なめにして透明感を保ち、味は塩で調えること。
  (4) 汁椀に盛り、下ゆでした季節の青物を、色付けとして少々のせる。
| 〔 補 足 〕 《豆麩》 名の通り大豆の大きさの丸い麩で、会津以外で見かけたことがない。 青森県や北海道でも生産されているとのことだが、故無く斗南藩へ挙藩流刑 (藩士333名は蝦夷地/小樽へ移送) させられた際に伝わったそうである。 会津では季節に関わらず、一年中、売っている。 「こづゆ」から派生したものとして 「つゆじ」 「ざくざく」 がある。 いずれも優劣は付け難く、とても美味しい。 《つゆじ》 田島町周辺の郷土料理で「つゆ煮しめ、ことじ」とも呼ばれる。 「こづゆ」 が貝柱と椎茸でダシを取るのに対して、「つゆじ」 は貝柱と煮干しでとる。 さらに、豆麩の代わりに、田島産「つと豆腐」を入れる。 「こづゆ」 と同じく正月や冠婚葬祭に欠かせない料理であるが、具材の数は奇数 (7、9、11など) が原則だった。 近年は拘らない家庭が多いとのこと。 《ざくざく》 二本松市周辺の郷土料理で、「ざくざく煮、ざくざく汁」 とも呼ばれる。 「こづゆ」が貝柱と椎茸でダシを取るのに対して、「ざくざく」 は煮干しでとる。 超細切りにしたスルメを加える家庭もある。 二本松が会津藩領の時代に伝わったが、貝柱を使うのは恐れ多いとして煮干しにして、具材は四角に切るようにしたとも伝わる。 近年まで具材の数は、慶事に奇数、弔事に偶数と厳格に守られていた。 | 
 水で戻した身欠ニシンを、山椒の葉とともに漬け込んだもの。
 会津を代表する料理の一つで、香り、味ともに、絶品である。
 「郷土料理百選」の1つ。
 山椒の防腐作用を利用した保存食であるが、まことに美味。
 ご飯のおかずだけでなく、酒のツマミにもってこいである。
 地元のスーパーには、真空パックされた出来合いが販売されている。
 北前船で運ばれる身欠きニシンは 長持ちする海産物の中でも、脂分が多い。
 江戸時代、雪に閉ざされる冬期を乗り切るための、重要なタンパク源であった。
 地元の本郷焼では、専用の四角い「ニシン鉢」が造られている。
 濃茶と黒色の美しい陶器で、昔は嫁入り道具の一つでもあった。
 山椒漬けへの、想いがうかがえる。
 [閑話]
【 材 料 (4人前)】
| ◇ 身欠きニシン | 12 本 | 
| ◇ 山椒の葉 | 30 枚 | 
| ◇ しょう油 | 200 cc | 
| ◇ 酒 | 100 cc | 
| ◇ 酢 | 80 cc | 
| ◇ 砂糖 | 大さじ 2 | 
| ◇ みりん | 大さじ 3 | 
【 調 理 】
  (1) 身欠ニシンを、米のとぎ汁に浸けて、アクをぬく。
  (2) 山椒の葉を水で洗い、水気を切る。
  (3) 水200ccに、しょう油、酒、酢、みりん、砂糖で、漬け汁を作る。
  (4) アク抜きしたニシンを、山椒の葉で交互に重ね、漬け汁に浸る様にして、漬け込む。
  (5) 重石をして、1〜3週間ほどで、完成。
  (6) 適当な大きさに切って、盛り付ける。
     魚の臭みと渋みが抜け"生"でも美味しいが、焼いても良し、あぶっても良し。
     オカズにも良いが、酒のツマミにも、なお良し。
| 〔 補 足 〕 冬の長い会津は、タンパク質の補給が必須であった。 タンパク質の1つとして、脂分の多いニシンが好まれた。 少し柔らかい「半乾」ではなく、硬い「本乾」を用いる。 やや臭みがあり臭みを消すため、頭を取った本乾きのニシンをタワシでよく洗い、米のとぎ汁でアク抜きして、山椒の葉とニシンを交互に重ね、酢・酒・醤油を入れて漬け込み、風味豊かに仕上げる方法を考案した。 江戸時代には、「ニシンの相場は会津で決まる」 と言われるほど消費されていたようである。 | 
 「棒たら」とは真鱈を干して棒のように硬くなったものを指す。
 じっくり気長に煮るので、骨まで軟らかくなり、口の中で崩れるほどの甘露煮が出来上がる。
 元のタラよりも、数段うまくなった逸品であり、珍味だ。
 正月やお祭り、祝いの席に用意される、めでたい料理である。
 地元のスーパーには、ニシンの山椒漬けと共に、真空パックされた完成品が売られている。
 海の幸にあこがれ、いかに上手く食べるようにするかの知恵が凝縮している。
 「助棒たら(スケソウダラ)」が主流になったが、特別な時には「本棒たら(マダラ)」が使われる。
 山に囲まれた土地での保存食で、身欠ニシンと同様、重要なタンパク源であった。
 昔は、棒たらと言えば「一ノ堰」と、皆が口をそろえるほど有名だった。
【 材 料 (だし汁、4人前)】
| ◇ 棒たら | 12 切 | 
| ◇ 水 | 5 カップ | 
| ◇ ざらめ (砂糖も可) | 2 カップ | 
| ◇ しょう油 | 1 カップ | 
| ◇ 酒 | 2 カップ | 
| ◇ みりん | 大さじ 5 | 
| ◇ 昆布と鰹のダシ汁 | 適量 | 
【 調 理 】
  (1) 棒たらを、たっぷりの水に浸ける。
     3日ほど毎日、新しい水を取り替える。
  (2) 戻ったら水洗いをして、1口大に切る。
     特に、腹部の黒い薄皮を取り除く。
  (3) 鍋にたっぷりの水を入れ、5分ほど煮立てる。
  (4) 冷めたら新しい水と入れ替えて、半日ほど置く。
  (5) たっぷりのダシ汁と入れ替え、落としぶたをして、弱火で3時間程じっくり煮る。
     汁が、半分になるころが目安。
  (5) 冷めたら、調味料を入れ、30分ほど煮る。
  (6) 冷ましては煮るを、3〜4回繰り返し、とろ火で味を含ませる。
     2、3日ほどかけ、骨が柔らかくなるのが目安。
 スルメイカと人参を千切りにして、しょう油などで漬け込んだもの。 冬の訪れとともに作られる。
 お正月には欠かせない逸品だが、客へのおもてなし料理ではない。
 熱いご飯との相性は抜群で、酒のツマミにも最高。
 種を取った赤唐辛子を、小口切りして入れる家も多い。
 ゴマとあえても、美味しい。
 生ニンジンのβカロチンやビタミンなどが豊富で、抗酸化作用による成人病の予防、女性の美容によく効く。
 松前漬の元祖でもある。
 松前漬と異なるのは、昆布が入っていないため、ぬめりがなく、シャキシャキしている。
 最近では、昆布や数の子を入れる家庭も多くなった。
 会津のみならず、県の北側地域でも広く食されている。
 令和3年度「伝統の100年フード部門 〜江戸時代から続く郷土の料理〜 (文化庁)」に認定。
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いかにんじん 【味付けも材料もシンプルな元祖スローフード】 福島県北部に江戸時代末期から伝わる「いかにんじん」は、するめいかと人参の千切りを酒・醤油・みりん等で味付けしただけのシンプルな和え物です。大量に作れて保存がきくため、正月料理の箸休めとして、祝祭時の酒のつまみとして地域で長く愛されてきました。最低限の調味料でつくる郷土料理で、水分が抜けてするめいかの旨みが染みたパリパリした人参の食味食感は癖になる味です。現在では福島県全域で一年中食べられており、各家庭でこだわりや工夫のある「おふくろの味」の象徴として親から子へ引き継がれています。近年ではポテトチップスなどの加工食品や、レシピサイトでのアレンジ料理、特に炊飯器に入れて炊くだけの「いかにんじん炊き込みご飯」はSNSで口コミが広まるなど、汎用性の高い味付き食材としても注目を集めています。 (文化庁/認定資料より) | 
| ◇ にんじん | 200g | 
| ◇ するめ | 1枚 | 
| ◇ 赤唐辛子 | 1/2本 | 
| ◇ しょう油 | 1/2カップ | 
| ◇ 酒 | 1/2カップ | 
| ◇ 昆布のダシ汁 | 1/2カップ | 
| ◇ みりん | 1/4カップ | 
【 調 理 】
  (1) スルメの薄皮をむいて、ハサミを用いて長さ約4センチ・幅2ミリほどの細切りにする。
     マッチ棒大と思えば良い。
  (2) 人参の皮をむき、スルメと同じくマッチ棒大に、千切りにする。
     幅をする目よりやや広めの3ミリほどにすると、よりシャキシャキ感が出る。
  (3) トウガラシは種を取り除き、細かく輪切りにする
。
  (4) 酒と昆布のダシ汁とみりんを混ぜ、アルコールを飛ばした後に、しょう油を入れ冷ます。
     酒、ダシ汁、しょう油は1:1:1の割合が目安で、みりんはお好みの量を入れる。
     しょう油の代わりに、めんつゆをを使っても美味しい。
  (5) この冷えたタレに浸し、半日か1日を漬けて、イカが少し柔らかくなれば出来上がり。
  (6) あとは、毎日、かき混ぜること。
 素揚げではなく、天ぷらにした3点が名物。
 特に、ニシンとスルメの天ぷらは、全国的にも珍しい食べ方である。
 冠婚葬祭や、来客のもてなしの時には、良く出される。
 甘いまんじゅうも、しょう油を付けて食べる。
 滝沢峠の強清水にある茶屋では、主な名物になっている。
 旧東山街道沿いの田楽の“お秀茶屋”、旧日光街道沿いの棒たらの“一ノ堰茶屋”と共に、名物三大茶屋と称されている。
 [閑話]
《ニシンの天ぷら》
 保存食である身欠ニシンを、1晩、水で戻す。
 その間、数回、新しい水と交換する。
 固い腹骨は、取り除く。
 7センチほどの長さに、斜め切りにする。
 軟らかくなったところで、天ぷらにする。
 元のニシンの味よりも、旨くなると言われている。
 手打ちソパとの相性も、抜群である。
《まんじゅうの天ぷら》
 元々は、仏前に供えて固くなったまんじゅうを、衛生上の安全のため揚げて食べたことから。
 揚げると油の旨みが加わり、さらに美味しくなったことから、作り立ても揚げるようになった。
 確かに、揚げると甘さが増す。
《いか(スルメ)の天ぷら》
 スルメは、3昼夜、水に浸けて戻す。
 毎日、新しい水と交換する。
 冷水がうまさを閉じ込んで醸し出し、生より美味しくするという。
 軟らかくなったところで、天ぷらにする。
 えんぺら、胴、足に切り分け、食べやすい大きさに切り、表面に斜めの切り目を入れる。
 多少、固めを好む人も多い。
 塩3、麹5、米8の割合いで漬け込んだ漬物。
 元々は会津の特産品であったが、全国的にも有名になり、東京でも漬け物として売っている。
 ヌカを使わないため、麹の甘さとやさしい香りが、季節を問わず楽しめる。
 毎日かき混ぜるような手間も必要ない。
 最近は冷蔵庫で保管できるため、塩分の少ない塩1対、麹2対、米4ぐらいの割合で、漬けている家が多くなった。
 きゅうり、人参、ナス、大根、かぶなどの野菜が中心であるが、鮭、ブリ、イカ (スルメ) などの魚介類や、肉などにも使われている。
 イワシやサバなどの青魚は、臭みも抜けて、まことに美味しくなる。
 味の薄い鶏肉も、うまくなる。
 上記以外で、美味しかったもの。
  ・アスパラガス、カリフラワー、ウド、菜花、みょうがのしそ巻き、セロリ、ショウガ
  ・エリンギ、銀杏、アボカド、ソラマメ、獅子唐
  ・さわら、数の子、砂肝、牛肉、豚肉
  ・こんにゃく、モッツァレラチーズ
 食べる時には軽く洗うが、洗い過ぎると風味も抜けてしまうので注意。
 生野菜に、三五八床を付けて食べても美味しい。
 [閑話]
【 調 理 】
 《漬け床の作り方》
  (1) 少なめの水で、良く洗った米を蒸すか炊く。
  (2) 60℃位に冷めてから、麹を混ぜる。
  (3) 10時間ほど、60℃を保つ。
  (4) 塩を混ぜて、10日位、冷蔵庫で寝かせば完成。
     容器に入れ、密閉して一晩置いてからでも使える。
 甘めが好きな人は、麹を多くするとよい。
 最近は、三五八漬けの素がスーパーなどで売っている。
 《本漬け》
  (1) 野菜などの具材は、あらかじめ材料の約4パーセントの薄塩で2日間漬けたものを、
    本漬けにする。
  (2) 漬け床に1〜2日漬ければ、三五八漬けができる。
     一晩ほど漬けただけでも、浅漬けとして美味しい。
  (3) 塩を足していくことで、床は繰り返し使える。
  (4) そのままにしておくと“漬り過ぎ”になるので、床から出してラップをし冷蔵庫で保管する。
     1〜2日で食べる量を、漬け込むのがコツ。
 親指より小さめなナスで、収穫時期が短い。
 7月中旬から8月中旬までが収穫時期。
 皮があることを感じさせないほど、柔らかさがある。
 会津の夏には欠かせない漬物の具。
 大阪/泉州特産品で全国に広まった「水なす」とはイメージが異なる。
 ご飯が何杯でも進む美味しさがある。
 季節限定ではあるが、漬物の中で断トツに美味いとお勧めの漬物である。
【 材 料 (水ナス20〜30個)】
| ◇ 水ナス | 500g | 
| ◇ 水 | 500cc | 
| ◇ 砂糖 | 大さじ3 | 
| ◇ 塩 | 大さじ3 | 
| ◇ みょうばん | 大さじ1 | 
【 調 理 】
  (1) 砂糖、塩、みょうばんを水に入れ、ひと煮立ちさせる。
  (2) 水ナスをへたのついたまま、さっと水洗いする。
  (3) 冷ました漬け汁に、へたのついたままの水ナスを入れる。
  (4) 重しをのせ、一昼夜漬けこんだら出来上がり。