[閑話] 小 汁 (こづゆ)

 子どもの頃(昭和30年前後)、"おかわりしないと失礼にあたる"、と教えられていた。
 材料は、ほぼ同じであるが、各家毎に多少の具材が追加され、味付けも多少違う。
 「お宅のは、うめーな(美味いね)」といって、相手をほめて、おかわりするのである。
 その家の姑と嫁を、ほめるためだとも、教えられた。
 確かに、薄味にしてあるので、何杯でも飲める。
 最近の居酒屋での集まりで、料金が安かったせいか小汁が出なかったことで、もめたこともあるほどである。
 集まりには欠かせないほど、今でも浸透している。
 東京でも1品を除いて、材料に困ることはない。
 その1品は豆麩である。 東京のものとは違う。

 祖父の代までは、「干し貝柱、木くらげ、里イモ、糸こんにゃく、ニンジン、豆麩、銀杏」の7種の基本具材を、忠実に守っていた。
 元々、「露」 という醤油仕立ての汁物があった。
 藩主が好んだため、さらに山海の珍味を加え、それが領内に広まったそうである。
 「小重 (小さな器) のつゆ」からとも、「小吸物(こすいもの)」からなど諸説ある。